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* ああ 勘違い
平成5年 某月 日曜日、天気快晴、風力そこそこ、最高のヨット日和です。いつものように宜野湾マリーナに到着

 当時の宜野湾マリーナの入り口は現在は閉鎖されている。北側ゲートです。車を駐車場に廻すと、いつもより駐車ベースが空いていない。車は込んではいるが人はいない。おかしいなと思いながらヨットへ向かう、係留バースのポンツーンも、ヨットが少ない。めざす船に着いてみると、船長DR-A氏はすでに船に到着していて、YSエンジンのウォーミングUPなどをしております。

 エンジンのウォーミングUPで重要なことは、数々ありますがそのひとつに、冷却水が十分供給されているかの確認があります。スターン(船尾)に設置されている排気口から一定量の海水が排出されているかを見ます。「そうです、車とは違い、船舶はマフラーの出口から水が大量に、排出されるのです」。

 その構造は複雑で、ある程度、排気圧が高くなると一気に押し出すという感じです。リズムを持っていて、トントントン、ブシュ~。 トントントン、ブシュ~。といった感じですね。ブシュ~という音は、海水が排気圧で押し出される音なんです。カンカンカン、パフ~。ではいけません。もしも、カン、カン、パフ、パフ、カン、パフ、パフ~。のリズムで、水が排出していなければ、出港を取りやめ、作業着に着替え、スパナを持つのが賢明です。

 

 出港準備が終了し、いよいよ出発です。ポンツーンから離岸します。じつは、船の操船は、この離岸、着岸がかなり、難易度が高いのです。マリーナで、入港、出港する船は、必ず、周りの船長、クルー、ペット、ゲスト、アバサーなどが、操船技術を審査しています。

 さりげなく観ておりますので表向きには、観られているとは感じ取れません。しかも、見えない点数表などを上げているのですよ。くれぐれも、あたふた慌てない様にしましょう。特に港内に、ウエーキ(引き波)を残すような舟は減点の対象となっております。それどころか、「ッ」 と舌打ちされるのが落ちですから、気をつけましょう。

 ポンツーンを離れ宜野湾マリーナの灯台を右に見て沖の2番ブイを目指すと、その周辺に十数隻ほどのヨットが、たむろしています。そのエリヤに近づいてみると、旗を立てた、パワーボート以外、みな、同じところをクルクル回っています。そしてパワーボートの乗船者らは、それらをじっと見つめています。なんとも変わった競技をしております。

 ウインチをジャージャー、回転高く廻す音、ジブ・セールがバタバタとシバーする音、メイン・セールがパーンとジャイブする音、右周りする船、左周りする船、スキッパーがクルーを怒鳴りちらす怒声、なにやら只ならぬ雰囲気です。

 それでも、まだ、なにごとか理解していない、我々、船長とクルーは、大きなヨットが、その場回転タックし、ヒールした時、海中に映えて見えた、青白いキールの鮮やかさに、「おお、カッコイイ、素晴らしい」 と感嘆の声を上げておりました。

 その最中も、我々のギョットは風を受け走っており、ケンケンも引いていましたので、まだまだ見学をしたかったのですがそのまま、あの喧騒のなかを、通過して行きました。

 良いものを観た後はこれまた、冷たいものが欲しくなります。ビールをBOXから取り出し、滴る水滴を拭きもせずクルーは船長に手渡し、自分の分も取り出しカンパイです。

 飲み物を、流し込み、船長とクルーは思い考えた。さきほどの、ヨット回転競技は、ヨット・レースのスタート直前ではなかったかと。あの、回転競技はスタートラインを超えないように注意し、さらにスタートに少しでも良いポジションを確保する為、長い1日のなかで、ここ一番の緊張状態ではなかったかと。

 ということは、まさに、スタートを切らんとする、十数頭のサラブレッドが、鼻先と耳を低く構え、スタート・ホーンが鳴るのを、今か、今かと、中腰で待ち構え足踏みしている中を、我々のギョット、いや、駄馬は、あなおそろしや、ニンジンをかじりかじり、お尻にはひもを付け引きずり、馬糞をポタポタ。競走馬のスタートラインを、トントコ、トントコ、のん気に通過していったことになりやしませんか。

 おそらく、レース艇の大半は、我々の船がスタートラインを超えた時、スタートが鳴ったのかと、勘違いして大慌てしたかもしれません。そうでなければ、フライングした船がエンジンをかけている上に、ケンケンまで引いているではないかと、大変に、たまげたことでしょう。

 この場を借りまして、当時のレース御関係、御各位様にお詫び申し上げます。「あのとき、かんちがいしていて、ごめんなさい。」・・・・・当時の舵誌には、沖縄県のヨット・レースは高く評価されており、全国的にもレベルは高いとの記事が載っていました。

 と、反省しつつ、セーリングしているあいだに、バケツにはビールの缶が溜まっていきます。ビールを飲み干したあとの缶を両手で挟み込むように、縦にいっきに潰し、バケツに投げ込みます。潰したほうが、収納と、かたずけに都合がいいのです。当時は船長、とクルー二人で、ビール24缶入1ケースでは足りないくらいでしたので、大量に飲みほした缶を、そうして処理しておりました。ビールをグビグビ、缶をグシャ、と言った具合です。

 天も高く、太陽がいっぱい、ビールもイッパイ、最高のセーリングです。そろそろ、ランチタイムになり、船長がお昼の弁当をデッキに広げます。おスシのようです、「うまい、海の上では何を食ってもうまい。」

 ポンツーンに、脳みそを半分、置き忘れてきたクルーは、よっぽどおいしかったのでしょう、何を思ったのか、 口いっぱいスシをほおばり、「和食同源。」 と大きな声で叫んだ。船長は、ニコニコして 「テルちゃん それを言うなら医食同源、と言うのだよ」 と優しく言い聞かせます。「そうか、和食同源と言わず、医食同源と言うのか、忘れないように書いておこう」。 

 クルーはスシをほおばりビールを流し込み、だんだん酔いが回って来ます。「船長、この間の北部の離島へのセーリング楽しかったですね~、あのバマツ(場末)の飲み屋で盛り上がり、楽しかったですね~。」 船長は、相変わらずニコニコ舵をとりながら 「テルちゃん、それを言うなら、バスエ(場末)と言うのだよ」 とアホなクルーに、優しく言い聞かせております。

 

 バスエの飲み屋で待っている女将は当然、賠償美津子さんです。優しくて、気が利いていて、ほのかな色気があり、料理上手で、雰囲気も良い、もう一度来たい、と思うような店でしょうね。

 一方、バマツの飲み屋で待っている女将は、たぶん、泉○ン○のような、おばはんでしょう。がさつで、無愛想、スルメを、まるごと投げて出し、文句を言うと、包丁が飛んでくるかもしれません。気をつけましょう。

 かくして、二人は、漫才のような会話をしながら、ビールをあおり、ケンケンをあおり、たまにセールトリムを調整し、キャビンに下りては飲み物やつまみを取り出しBGMテープを変えたりして宜野湾マリーナ沖を夕方までこれでもかというくらいセーリングを楽しんでおりました。

 「わしょくどうげん、和食同源、ばまつ、場末」。・・・・・・・・・・・まだ言っとるか~。・・・・・グビグビ、グシャ、グシャ。

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宜野湾マリーナ、ヨット・セーリング