・平成19年1月某日 曇り     風向き 真北

 * 船がヒンチ(すねた)した日

 ヨット、スカンピを売却しよう。ようやく自分自身の気持に整理ができたころ、乗り納めだということで、弁当とペットボトルを引っさげて船を係留している。歴史ある海人の街、糸満に最近オープンした、糸満フィッシャリーナへ・・・・・ハッチを開けエンジン始動、セールをセット、出航準備OK。

 その日は曇り空、多少波と風がありましたがなんとか出航。北の風にアビーム(真横の風)でルカンに向かい40分、ウネリが激しくなりはじめたので左に舵を切り、本島南部の糸満、喜屋武岬へ。

 岬は 喜屋武岬が風を遮り、風裏となり波風ともに静かだがウネリは大きい、しばらく久高島方面にセーリング、1時間ほど走ったあとUターン。再び、西方向へ船を向け岬を抜けようとした時トラブル発生。

 ヨットの前に揚げているジブ・セールを操作するロープがほどけ、ジブ・セールが風にあおられバタバタあばれ始めた。その場所は岬を抜け始めで北風が本島に沿って吹きぬけるやや荒れる海域。風・波・ウネリ・潮流、喜屋武岬から突き出た、解りにくいリーフ。おまけに肝心のジブ・セールが効かない状態。

 ましては、この船の特性で、船の傾きが大きいと、エンジン冷却水取入れ口が、海面にでてしまい冷却水が回らず、エンジンがヒートするのです。そういうことで、はなからエンジンが頼りにならないのは解っている。

 船のへさきのジブ・セールをなんとかしようとデッキの上を、海に落ちないように、はいずりながら、へさきへ行くとメタボな親父のウェイトが加わり、ただでさえ波に突っ込むクセのあるスカンピがさらに波の横腹に沈み、突っ込んで海水を思いっきりかぶった。と思うと一瞬にして波の頂点に上りふわっと体が軽くなる。そうなると海面は、はるかに下に見える。

 と、同時に、見晴らしが開け、風がビュービュー、波しぶきがバチバチ、上りつめると再び波に突っ込む。その2パターンの繰り返し。舵を、にぎる者もいないので船は、勝手気ままに行きたい方向に右へ左へ。

 こういう時に限って行ってはほしくない方向になぜか向かう。そのころからのどもカラカラ、息もたえだえになりながらも、何とかジブ・セールをセールダウンし、ストーム・ジブ(荒天用)に交換、ついでにメインセールも2ポン(縮帆)にセット。

 

 船は、多少静かになり安定はしたものの、風は上がり始めている、帰りたい港は、北方向の真横にある。しかし、ストームジブ(セール面積が小さい)のため、クローズ(風に向かう)が得意のスカンピもさすがに上らない。西方のルカン礁に向かい、突っ走っている状態。これでは上りをかせげない。ルカンとトコマサリを永遠にタックタックで往復するばかりだ。

 「解った。船がヒンチしている。これはスカンピが、売却されるのを知っているとしか思えない。怒っている。だいたい私が、へさきに這いずって行ったとき、考えられないほど船体をかたむけ、落とそうとした。

 「あれほど可愛がってやったのに。メンテにいくらつぎ込んだと思っているのだ、セールがほつれれば手縫いで修理してやり、エンジンもO/Hもしてやり、ミッションもO/Hしてやったじゃないか、13年かけてこつこつレストアして来たのはいったい誰なんだ。」

 とにかく、このままでは上らない、帰れない、再び降ろしたばかりのレギュラージブセールを、キャビンから引っ張りだし、またもや、ドッシャン、バッシャン、ハーハーヒーヒー言いながらセールをなんとか再装着しジブをセールアップ、ここまでの所要時間は30分も係った。・・・どうか、持病の痛風や腰痛が今は出ませんように・・・。

 ようやく、港に向かい、3タックで赤ブイ(2番)を右舷に見ながらアビームで入れそうだ。風波はさらにひどくなってきた。よかった帰れそうだ。・・・思わず船に対し、「悪かった。本当に悪かった。二度と売ろうとはしませんから許してください。すまんすまん、ごめんごめん」 とつぶやいてしまった。結局は自分のミスから始まったことではあるが、その時は心からつぶやいた。

 一ヶ月ほど経過して、やはり維持管理費を長期的に考えると無理があり、仕方なく泣く泣く、スカンピを売却してしまいました。現在は新しいオーナーのもとで可愛がってもらっています。時々メンテを手伝っています。

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http://www.youtube.com/watch?v=zXuzy0k9mZQ
上記はyoutubeの画像です。