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 10月の初旬 土曜日、いつものように宜野湾マリーナへ。ここしばらく天気が悪くセーリングをしていない。今日は久しぶりにセーリングをするぞっと。意気込み、車をかっとばしてマリーナに着いた。相変わらず、Yはまだ来ていない。

 天気は良いが、風がある。沖合いの波はどうだろう?金網越しに背伸びをし、3番ブイを見てみると、いつもより頭を左右に振っている。波頭もウサギが走っているし、リーフ手前は、ヒツジが連なり飛び跳ねている。

 セーリング・クルーザーなら、たいしたコンディションではないがディンギーにはちょっと無理だ。ブローもきつい。お日様は照っているが波・風が悪い。・・・・・・・・本日天気晴朗ナレドモ浪高シ。

西風なので、艇がチンした場合、東に押され流される。東側には灯台のある防波堤がある。横沈の状態でテトラに張り付いてしまう。当然、艇は波風に押され、叩かれ、砕けてしまうに違いない。リーフに流されても結果は同じとなる。

今日のセーリングは駄目だとあきらめた。しかし、せっかくここまで来たのだ。明日は、良くなるだろうと期待をし、取り合えず艇を、北側ポンツーン(林さんのストーン・ホースが舫ってある)に浮かべておくことにした。

 気持ちは決まった。艇の艤装を始める。ジブセール装着、メインセール装着、サバイバル・キット等その他いろいろ艤装をする。特にメインセールは、2ポイント・リーフとした。南スロープから下ろして北側のポンツーンまで行くのにも当然セーリングで行かなければならない。たとえ港内でも、この風では、スピードが出すぎるに違いない。港内で片ハル走行なんてしたくない。

そんなこんなしていると、ディンギー仲間のYが仕事の都合で今日はマリーナに来れないとの連絡が入った。

これは困った。最近、自分はシングルで出航及びセーリングをしていない。いつも、Yがいて、互いに段取り良く、セーリング・スタンバイ、離岸・出航、セール・トリム。などをしていたが、それを一人でこなさなければならない

 NACRAは、さまざまに引っ張ったステイがマストからハル・フロートにテンション高く張られている。トランポリンには、いろいろな種類のひもが散らばっている。メイン・シートやメイン・トラベラー、ジブ・トラベラーやマストの回転を制御するひもや、メインセールのトリムをするわけの解らない装置も2箇所ある。それを一人でこなすにはまだまだ未熟だ。それを考えると、あんなYでも重要なクルーだと認識した。「いや、クルーではないボースンだ。これからは、ボースン様と、呼ばせてもらおう。・・・・

(ボースンとは、ベテランの船員のことを言う。別説では、船長を、ボス、大ボス、ヨッ、オヤカタなど、呼び持ち上げては、ボスにひっぱたかれている奴のことを言う)

 ボースンは、来ない事だし、一人でスロープに艇を運び入れ、下ろしたが、西風が強く、船台から、艇が離れない。マストが高く太いので、風を受け離れようとしない。ベア・ポールとなっている。仕方なく、ロープを準備し、スロープを、滑らないように、カニ歩きをしながらジャブジャブ海に漬かりスターンのクリートに舫いを取った。それを、岸ずたいに引いていけば、浮き桟橋まで持っていける。

 その後、ずぶ濡れの下半身のまま、マイカーに乗り込み船台を片付ける。「なんて煩わしいのだ。めんどくさい。時間がかかる。トウリョウの有難みが身にしみる。ボースンは、いい仕事をしているかも知れない」。明日は、ビールを、1本多く飲ましてあげようかなと思ったりする・・・・(多分あげないけど)。

 仮止めした艇は、当然風下に向いている。それを、風上に向けなくてはならない。再び、ロープを駆使し、艇を蹴飛ばし蹴飛ばし、風上に向けた。さてと出航準備だ。メイン・セール・アップ。センター・ボード左右ダウン、ラダーも左右ダウン。メイン、シートを緩くして風を逃がして置く。それでも艇は走り出そうとする。舫いを硬く閉めなおす。

 トラピーズ用の装備を着用、ライフ・ジャケットを装着。港内移動だが、重装備はしておく、万が一 沈したときフックをかけ、艇を起こすのに必要となるからだ。一人だと慎重になるのです。不安なのです。

 いよいよ、乗り込んで離岸する。風向きは北北西にシフトしてきている。ジブ・セールも展開する。舫いを外すと同時に走り始めたが、やがて失速しはじめた。どうやら、港内の海面は、東風の場合は良いのだが、その他の風は、周囲の防波堤にそって流れるか、風裏となり乱れるかのパターンのようだ。行きたい方向から風が来て失速する。

 失速しているので、舵が取れない、風を受ける為には舳先を風下に振ってやるしかない、そこでティラーを左右に、振りこいでやったら、風を受け始めようやく走り始めた。目指す着岸位置に着けるには左から大きくUの字に回り込まなければならない。ジャイブすると同時に突風が吹き、ブームが暴れ、自分のオデコにジャスト・ミートした。金属音が「カーン」と高く鳴った。身震いするほど痛かった。ポンツーンには、林さんがいて、舫いを取ってくれたので助かった。

 ポンツーンまで異動したが北北西の風が強い、明日まで係留するので舫いを慎重に取っておくことにした。メインセールは降ろしロープでぐるぐる、束ねその上から念のためライフジャケットを着せてやった。それにスプリング・ロープも取った。重量が軽いのでその位、頑丈に舫いを取らなければならない。明日の準備は万端だ。

 帰宅してシャワーに入ったが頭を洗っていると右の額にこぶが出来ていた。顔面を洗う時、右ほほ骨も痛みが走った。気づかなかったが二箇所をブームで打ち付けたらしい。そのためか翌朝は右耳の穴の奥まで痛かった。

そんな、痛みも、趣味のサンデー・セーリングなら我慢もできる。セーリングが出来るならそんな痛みはなんともない。高速道路をとばしてAM10:00にハーバーに着いた。トウリョウは相変わらずまだ来ていない。一人で出航準備をしているうちに、トウリョウが到着した。

 「トウリョウ~。お早うございます。私、日の出と同時に、こちらに到着致しまして、出航の準備を、済ませておきました」   ・・・・・・しゃくにさわるので皮肉を言ってやった。

 「オヤカタ~。ございます~、はやかね~、でもオレは昨日から来とったんよ、朝方オヤカタの飲み物を買いに行っていたんよ。」・・・・・・ ボースンも負けていない。

 くだらない冗談を言い合いながら出航の段取りを済ます。風向きは相変わらず北北西の風、ときおり突風が港内の水面を走る。メインは2ポンリーフ、ジブセールは全開にして、ポンツーンから離岸する。

「行くぞ!」 ・・・・オヤカタ合図する。

「よかよ!!」 ・・・・トウリョウ答える。

 互いにやる事は判っている。出航のときだけは、あまり互いにあれこれ言わない。左舷に風を受けクローズである程度岸から離れ、すかさずタックする。艇は、ハーバーの出口に向かいクオーターリーで押され疾走し始めた。ここの出口が最初の難所なのです。我々はそこを、ア○ノト○タ○と名づけている。そこは、空間狭く、真向かいから風が吹いてくる。または乱れ風、もしくは、無風になる。ディンギー泣かせの難所なのです。

 今日は、後ろから風を受け押され、あっという間に外に出たと思ったら、一発目の横波で二人とも全身ずぶ濡れになった。灯台のある防波堤を抜けたと同時に波が西方向から、当たってきた。風は北北西より、ややシフトして、西北西に成っている。風が思ったより強い、波が高いそれらが後から後から当ててくる。取り合えず2番ブイまで行ってみようと決めた。2番ブイを抜ければだいたい波は収まる。クローズ・ホールドぎりぎりで風を逃がしながら、艇が走り出さないように微妙に舵を取り沖に向かった。

 航路は海底が浅く、西風になると、うねりが押し寄せ、波が高くなり、とにかくやりずらい。しだいに、航路からはずれ、リーフに向かっている。うねりのような波を斜めにやり過ごしていたら、リーフに向かい走っている。波が荒い、うねりが高い、舳先が持ち上がったと思うと、波が艇の下を通り過ぎて行き、舳先が落ちると同時に、しぶきが全身に当たる。音もなる。

「トウリョウ~ 落ちるなよ~」・・・・・・・オヤカタ叫ぶ。

「オヤカタ~ あんたもね~」・・・・・・・トウリョウ叫ぶ。

二人とも出て来たことを後悔した。引返すことに決めた。が、なかなかタックのタイミングがつかめない。何本かのうねりのような波をやり過ごしタックした。

「いち、に、さ~ん、でタック」・・・・ オヤカタ

「リョーカイ~」・・・ トウリョウ

 口数少なく、二人ともいつものようにタックした。うまく行った。一人ではまず無理だ。ボースンがいて良かった。日ごろの練習のたまものだ。波が迫ってくるのが怖かったがうまく行った。しかし、ここからまた、慎重に艇を操作しなければならない。強風で後ろから風を受けるとコントロールが難しい。サーフィングとなりスピードが出すぎ、しまいには波に突っ込み、バウ沈してしまう。二人の操船技術ではそうなるに決まっている。

 航路での沈は避けなければならない。大型艇などが航行するのに支障になり迷惑がかかってしまう。しかも、周りは、リーフの珊瑚や防波堤のテトラだ。どこに流されても大事になる。どうせ沈をするなら、むしろ沖合いの水深が深いところで沈したほうが良い。

 そんなことを考えながら港に向かった。向かい風と違い、波にたたかれない分ほっとした。それでも油断すると疾走しようとする。ティラーを強く握るうでが上がってきた。違う意味で緊張する。とにかく艇を走らせないように操船をしなくてはならない。

ジャイブを何度か繰り返し、アビームで寄港しようとボースンに、トラピらせスタンバイを指示すると。

「オヤカタ~ えらいこっちゃ サイドステイのピンが抜けそうやで~」  トウリョウ叫ぶ。

「なに~ えらいこっちゃ 元に押し込め~ えらいこっちゃ」  オヤカタ悲痛に叫ぶ。

 艇の操船もしなければならない、波の状態も把握しなければならない、しかも左側のサイドステイとターンバックルをつないでいるピンが抜けそうになっている。正確には、ステイの穴に4ミリのピンがさしこまれ、そのピンが抜けないようにステン製のOリングがピンの穴に入っている。それが抜け落ちようとしている。それが抜けると、ステイをつないでいるピンが抜け落ち、マストはデス・マストする。

 ヨット乗りが避けたい事故は、(落水事故)、(艇の座礁)、(デス・マスト)、この3大アクシデントが、一番起きてほしくない事故なのです。それが今起きようとしている。カタマラン・ディンギーがデス・マストすると、あとの2大事故も、もれなく付いてくる。

二人して必死にリングを元に戻そうとするが、ピンが抜け始めているので、リングにテンションがかかり固い。

「ああ~ かたか~ 入っていかんバイ」・・・ トウリョウ 頑張る。

「がんばれ~ 艇のデス・マストは、おまえにかかっているぞ~」・・・オヤカタ 励ます。

波も高く風も強い、艇は、波に翻弄され、コントロールどころではない。

ダー こうたい~」・・・・・ オヤカタ 修理作業を交代する。

 船はあばれるわ、しぶきはかかるわ、老眼だわ、うまく行かない。一瞬、大波にあおられたと同時に、オヤカタはバランスをくずした。差し込むべきリングを逆に引き抜いてしまった。差し込むべきはずが、引き抜いてしまったのです。

手榴弾の安全ピンを抜いてしまった。

「 ???・・・・・?」二人は声にもならない声を出し。互いに向きあった。

、アンタ、なにをしとんの~ あ~」 ・・・・ トウリョウ引きつる。

、おまえ、指でそのピンを、とりあえず押さえておけ~」・・・・ オヤカタ無理を言う。

 周りは荒れた海だ。そうも行かない。トウリョウはリングを奪い返しなんとかそれを差し込んだ。そのおかげで艇は、3大事故にも会わず、難所のア○ノト○タ○も無事通過し、ポンツーンに着岸した。クッタクタに疲れた。ボースンに感謝。感謝。今日はビールを2本多く差し上げようと思う。    (車は、置いて帰ります。)

今月の標語 → とりあえず出航するのでなく、とりあえず出航しないでおこう。メンテナンスは、日ごろから注意しよう。

カタマラン・ディンギー出航
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